パントリーってどれくらい必要?

「パントリーはどれくらいの広さが必要ですか?」

この問いに対して、設計士としての答えはひとつではありません。なぜなら、パントリーは面積で決める収納ではなく、寸法と使い方で成立する収納だからです。

「帖数」ではなく「有効寸法」で考える

まず前提として、1帖、2帖という言い方は暮らし手にとってイメージしやすい表現です。ただ、設計の立場では広さの数字だけで判断するのではなく、実際に使える有効幅や有効奥行き、棚の寸法を見ながら考えていくことが大切だと考えています。例えば、最小構成としてよく成立するのが、

・有効幅:900〜1,000mm
・有効奥行き:350〜450mm
・棚ピッチ:100〜150mm可動

この寸法が確保できれば、食品ストック、調味料、保存容器のよく使うモノは収まります。奥行きを600mm以上にすると収納量は増えますが、奥の物が死蔵されやすく、結果として「広いのに使いにくい」パントリーになりがちです。

ウォークインにするか、壁付けにするか

よくあるのが「ウォークインパントリーにしたい」というご要望。ただし、実務的に見ると、1帖前後の面積でウォークインにすると、

・通路幅が狭い
・棚奥行きが中途半端
・収納量が思ったほど増えない

というケースも少なくありません。同じ面積であれば、壁付け+片面収納の方が有効収納量が多く、使い勝手が良い場合もあります。ウォークインにするかどうかは、「中に入れるか」ではなく、何を収納するかで判断するのが正解です。

 パントリーは動線計画の一部

パントリーは、収納単体で考えるのではなく、日常動線の一部として計画し「存在しているけど使われない収納」にならないようにすることが大切です。

■ 買い物からの帰宅動線
玄関→キッチン→パントリーが一直線、または最短距離にあると、重い荷物を持ったまま迷わず収納できます。
遠いパントリーは使われなくなります。

■ ゴミ出し動線
ゴミ箱をパントリーに入れるなら、勝手口や外部動線への近さが重要。
「溜める」「まとめる」「出す」が自然につながる配置が理想です。

■ 料理中の動線
冷蔵庫・調理台・パントリーはワンアクション圏内。
振り返る、半歩動く程度で届く距離がベスト。
遠いと結局キッチンに物があふれます。

動線に組み込まれたパントリーは、意識せず使われ続ける空間になります。また、キッチン背面収納と役割を分けることで、パントリーは「使用頻度の低いもの」「量を持つもの」に特化させると整理しやすくなります。

例|帰宅動線にの一部になっているパントリー

ゴミ箱入れる場合の寸法注意点

パントリーにゴミ箱を入れたい、という要望は多いですが、必ず実寸での検討が必要です。

設計時の基準としてよく使うのが、無印良品・再生ポリプロピレン入りペダル式ダストボックス。

・幅:200〜250mm
・奥行き:350〜400mm
・本体高さ:約450mm

ペダル式のため、フタ全開時は有効高さ約650mm以上が必要になります。この高さを見落とすと、「フタが開かない」「引き出して使う」といった使われない収納になりがちです。パントリー内のゴミ箱は床置きが基本。棚下は650〜700mm確保し、奥行きは実寸+手前クリアランス50mmを目安にします。

地域によっては「可燃・不燃・資源」の3分別以上になることも多く、計画地のゴミ分別について調べることが大切です。また横に複数並べる場合は将来の分別増も考慮しましょう。

家電を入れたまま使う場合の注意点

パントリーに家電を入れる場合、ポイントは「置けるか」ではなく安全に使い続けられるか。最低限押さえたいのは次の寸法です。

・家電本体寸法+放熱スペース50mm以上(背面・上部)
・炊飯器など蒸気が出る家電は上部200mm以上
・スライド棚使用時は、引き出し代+作業スペースを確保
・奥行きは家電実寸+配線スペースを含めて450〜500mmが目安。

これらを見落とすと、熱がこもる、蒸気で棚が傷む、結局使われない収納になりがちです。家電収納はカタログ寸法ではなく、「使っている状態」を想像して決めるのが設計の基本です。設計段階で、持ち物リストを共有してもらえると、パントリーの完成度は大きく上がります。

また冷蔵庫や電子レンジなどは、扉の開閉スペースと動線も要チェック。特に扉の開き勝手(右開き・左開き)によっては、通路をふさいだり中身が取り出しにくくなることも。設置前に使うシーンをしっかりイメージしましょう。

例|冷蔵庫と冷凍庫を置いたパントリー

 まとめ

パントリーは、ただ大きければ安心というものでも、反対に小さい方が正解というものでもありません。

・家全体の面積配分
・買い物の頻度
・料理のスタイル
・家族構成と将来の変化

これらを踏まえて、必要な収納量を整理し、最適な位置と広さを決めていく。設計士としては、住まい手の暮らし方を読み取りながら、「足りる」と「余らない」の境界を探していきます。子どもが成長し、家族構成や暮らし方が変わっていくことを考えると、「少し足りないくらい」がちょうどいい場合もあります。住まいは、今だけでなく、これからの暮らしを支える器。だからこそ、ご家族と丁寧に話し合いながら、納得のいくパントリー計画を一緒に考えていきたいですね。

住まいづくり、愉しみましょう。

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